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2002年5月27日〜6月16日
From Chiangrai






中国・モンゴル旅行記1「出発 〜 中国(北京)」
中国・モンゴル旅行記2「大同」
中国・モンゴル旅行記3「国際列車」
中国・モンゴル旅行記4「モンゴル(ウランバートル)」
中国・モンゴル旅行記5「カラコルム」
中国・モンゴル旅行記6「旅の終わりに」





3.国際列車

目が覚めると6時を少し過ぎていた。新しい宿は地下にある為一日中真っ暗である。なんとも時間の感覚がつかみにくい。体は・・・ なんとか7割近く回復しているようだ。昨日の瀕死の状態が嘘のようだ。荷物をまとめ、歩いてみる。動ける。よし出発だ。朝7時過ぎに北京駅に到着。それにしても駅前っていうのはどうしてこんなに人が多いんだろう。皆、ただ座っているだけにしか思えない。 いつも暑い時などに休憩させてもらっているVIPルーム(外国人用チケット販売場)からの乗車となった。列車は中国ではおなじみの緑色の車両である。ただ、行き先のところに「北京−ウランバートル−モスクワ」と書いてある。そうである。これはモスクワまで行くシベリア鉄道なのである。早速乗車♪ いつもながらこの瞬間はどきどきする。何だか嬉しくてたまらない。そして入って驚いたのだが、なんとすべて軟臥なのである。

国際列車
国際列車の中

少し中国の列車について説明しておこう。 中国の列車には全部で4つのグレードがある。硬座・軟座に、硬臥・そして軟臥である。すべて漢字な為分かりにくいかと思うが、要するに「硬い椅子」に「軟らかい椅子」、「硬いベッド」に「軟らかいベッド」のことである。短距離ならばこの硬座・軟座(硬い椅子、柔らかい椅子)で十分である。しかしこの硬座(硬い椅子)は悪名高く、汚い、狭い、臭いの3拍子が揃っている。中国を良く知ろうと思ったらここに来るのがいいだろう。留学時代、この硬座に30時間以上乗ったことがあるがあまり思い出したくない。そして硬臥・軟臥(硬いベッド、柔らかいベッド)であるが、一般的には皆、硬臥(硬いベッド)を欲しがる。車両の中に3段とちょっと狭苦しいが、ちゃんと横になれる分椅子席より快適である。安いがその分入手も難しい。そして最後に軟臥(軟らかいベッド)。これは4人部屋のちゃんとしたコンパートメントになっていて、お湯なんかも乗務員が替えてくれるリッチなものである。    

さて、今回である。購入したチケットには「硬臥(硬いベッド)」と記されていたので、上記の通りぐらいだろうと思っていたら、なんとすべて軟臥(柔らかいベッド)と同等の設備だったのだ。 (左上写真:国際列車の中)

しかも、部屋のいたる所にあるささやかな心遣いが嬉しい。大きな荷物置き場があったり、ハンガーがあったり、フックなんかもたくさん付いている。そしてさらにもっと驚くべき事に昼食・夕飯付きなのである。食堂車がついているのは知っていたが、高いと思っていたのでそんなところでは毛頭食べる気はなく、わざわざ車内用の食料品を大量に買い込んでおいたのだ。全くもって驚きだ。何でもこれは中国国内のみでのサービスで、明日モンゴル入りしたらそんなもんはなくなる、と中国乗務員が胸を張って言っていた。昼過ぎには体力も9割以上回復したのだが、大事をとって油食は避け、持参したパンをかじる。

無料長城
休憩駅から見た万里の長城

同室はスウェーデン人家族3人。中年の夫婦にその娘さんだ。とてもいい人達だった。コーヒーやらお菓子やらたくさんご馳走になった。モスクワまで行くそうだ。5日間。長い。これから丸一日以上英語漬けとなると思うと気が重いが仕方ない。
出発して1時間ぐらいで万里の長城を列車から望むことができた。これはかなりお得。長城に行かなくても観光できる。午後2時過ぎになんと大同に到着。「下痢の街」だ。しばらくは思い出したくない。ここを経由して、このまま北上する。16時ぐらいには内モンゴル自治区に入った。このあたりから景色が一変する。ほとんど草原だ。時折、羊の放牧なども見られる。
(右写真:休憩駅から見た万里の長城/注:停車したのはウランバートルからの帰りの列車)

しかし、白人バックパッカーの荷物ってのはどうしてこんなに大きいのだろう?親子3人旅で大きなかばん4つに、小さなかばん3つ。(それでもリュックサックぐらいはある) 貴重品入れなんかも入れると、一体幾つあるのか分からなくなってしまう。自分が部屋に入った時、

「hello!」
の次に
「なんて小さなカバンなんだ!」
と言われてしまった程だ。こちらが小さいんじゃなくって、そっちが大きいんだよ、と言いたくなった。
少し話がそれるが、タイの南、タオ島に深夜船で行った時のこと。南だと思って甘く見ていたら、夜の海はとてつもなく冷え込んだ。船上で吹きさらしだったのも悪かったが、とにかく長袖一枚の自分には辛かった。そんな時白人のカバンである。なんと毛布が出てきた。これにはあ然とした。旅行用毛布ではなく、ゲストハウスなどにある普通の毛布である。日本人の発想を超えていると思った。

話を元に戻してスウェーデン人親子。気が付くと自分が苦労して持って来ている一眼レフよりも、もっと大きな双眼鏡で車窓からの眺めを楽しんでいた。怪しげに見ていると、  
「ジュン、ウシが見えるぞ。」
と言って貸してくれた。お父さんは中年と言うよりは初老といった感じで、とても話し好きな上、気さくな人だった。英語が苦手な自分にも一生懸命話してくれる。もっと色々話せたらいいなと思う。双眼鏡でしばらく見ていたら酔って来たので笑顔でお返しした。

1日半ぶりに油食を食べる。無料夕食である。 うまい!完全な中華なのだが涙が出るほどうまかった。水もコーラも思い切り飲んだ。こんな当たり前のことがとても貴重に思える。嬉しい。やはり健康が一番だ。

台車交換
人力での台車交換

21時頃に中国側国境の町、二連浩特(ニレンホト)に着いた。 すごいと思ったのが出国手続きである。列車の中で待たされ、中国人担当官が2人やって来てハンコを押すだけだった。マレーシア−タイでもわざわざ降りて堅苦しい建物を通過させられたのに、なんだこのいい加減さは。まあ、いいが。
それよりすごかったのが、台車交換作業である。中国側とモンゴル側ではレールの幅が違うため、国境で列車の台車を交換するのである。大きなドーム、オレンジ色の光の中、交換作業が始まる。列車を一両一両切り離し、機械で持ち上げ、モンゴル用の台車に交換していく。本当にめんどくさい作業だ。台車を押すのが人力ってところがいかにも中国だ。いやいや、実に変わったものを見せてもらった。
しかしこれからが長かった。台車を交換した後、全く動く気配がない。一体何をやってるのかと思うほど静かだ。列車の中は白人だらけなのだが、皆の顔に疲れと苛立ちが見られる。只今午前1時。未だ中国にいる。これからモンゴルに入って、入国手続きもしなければならない。停車中なのでトイレも水も使えない。生暖かい嫌な空気が車内を満たす。
(左上写真:人力での台車交換)

列車からの眺め
列車からの草原

次の日、起きると一面草原だった。中国の内モンゴルとは違い、なだらかで広い。こちらの方がでかいなと思った。
しかし昨夜の出入国検査は本当に長かった。最低でも6時間はかかっているはず。こんな長いのは初めてだ。モンゴル側の入国審査官も腹が立つ。威厳さを強調する為か知らないが黒ぶちの細いめがねをかけ、すべて命令口調で話してくる。相当お偉い方なのだろう、旅行者に対しては。
しかしそれを打ち消すぐらい景色はいい。見事な草原だ。時折様々な動物が見られる。鳥や馬や羊。こうやって書いてしまうとなんでもないが、皆すごく生き生きしてる。広い草原を自由に走り、自由に草を食べ、自由に糞尿をたらす。あんなにはしゃぐ馬っていうのは初めて見た気がする。短い夏の間だけだとは思うが、とても自然な風景だ。スウェーデン人親父もことあるごとに、
「ジュン、ウマだ」
「トリだ」
「ヒツジだ」
と、双眼鏡を貸してくれる。色々説明してくれてとても嬉しいのだが、なにせ何を言ってるのか半分ぐらいしか分からない。でもいい人だ。食事の後歯を磨く。大草原を眺めながらの歯磨きは格別だ。できれば熱いコーヒーでも飲みたかった。書き忘れたが、もう随分寒くなってきている。車内は暖かいが、外で半袖一枚では少々きつい。ウランバートルはもう目の前。ずっと草原ばかりだが、本当に街なんてあるのだろうか?
(右上写真:列車からの草原)


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