情けない話だが、今回のモンゴル旅行で覚えたモンゴル語は、「アハ」の一言である。意味は「お兄さん」。これは今回のカラコルム行きで案内してくれた知り合いのガイドのお兄さんをこう呼んだためだ。一緒にいる間はずっと、
「アハ、アハ」
と呼んでいた。それにしても恥ずかしい。つい最近、「知らない国へ行っても、こんにちは、ありがとう、さようならの三つは必ず覚える」などと豪語していた気がするのだがこの有様だ。これはひとつに、ひろみさんがとてもよく面倒を見てくれたというのもあるが、やはり何よりも自分の怠慢であろう。反省。
「いってらっしゃーい」
「気をつけてね」
朝九時、カラコルムに向けて出発した。メンバーは5人。ひろみさん、その友人のゆうこさん、そのまた友人のしょうこさんに自分、そしてアハだ。ゆうこさんはひろみさんと同じく協力隊で来ている。なんと日本語教師。同業者だ。しょうこさんはその友達。遠く日本から遊びに来ている。朝九時の出発だが、最近グウタラしていたためか、体が重い。風もあり、そこそこ冷え込んでいる。しかしそんな寒さの中、なんとひろみさんの友達らが見送りに来てくれていたのだ。しかもお土産のお菓子を持って。これには驚いた。日記にも走り書きで、「すごいぞ、ここの人達は」と書かれている。いい人達とめぐり合ったんだなあと羨ましく思った。
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道中に撮ったモンゴル草原 |
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カラコルムまでの道中、全体的には風が強く曇っていたのだが、それでも太陽が出ているところではイメージ通りのモンゴルを見せてくれた。
(写真右:道中に撮ったモンゴル草原)
首都ウランバートルを出ると、すぐなだらかな丘陵と平原だけの世界になる。それ以外まったく何もなくなってしまうのだ。とてつもなく広い、車に揺られながらそう感じた。広大な草原は、それ以上に広大な青空をつくる。
「モンゴルには世界一の空がある」
そう言った先人がいるそうだが、なるほどそうかもしれないと思う。頑張ってやってきた甲斐があるというものだ。
ウランバートルから車で西に8時間ほどでカラコルムに着く。かつてのモンゴル帝国の首都で、モンゴル高原の中心にあたる。気候もよく緑豊かな土地のため、古来より争奪の地であったらしい。現在は物静かな町になっている。いや、町というよりは「大きな集落」と言う言葉の方が適当かもしれない。正直何もない。カラコルムでの宿泊はアハの知り合いのおじさんの家に泊めさせて頂いた。なかなか立派な家で、モンゴルではそれなりの階級だという。結局ここで2泊することになった。
モンゴルの家庭を訪れた時に必ず出されるのが、ツーテンチャイと呼ばれるお茶だ。ご存知の方も多いかと思うが、塩味のミルクティーである。(別名バター茶)
初めの頃はこれが砂糖だったらどんなにおいしいのだろうと思っていたが、何度も飲むうちにやがて美味しく感じられるようになった。もちろんここでも振る舞われた。数をこなしていないので分からないが、中々の味だったように思う。
食べ物の話が出たのでついでに書いておくが、「食」についてはモンゴルは寂しいと言わざるを得ないだろう。厳しい気候やその文化(遊牧民族など)のため、「食べる事を楽しむ」と言う感覚があまりないのだと言う。ここでとれる主な物は、羊などの肉にじゃがいも、小麦粉、そして乳である。その他多くの物は中国等からの輸入に頼っているのが現状だ。これではうまい料理ができるはずがない。さすがにウランバートルでは物不足ということはないが、それでもやはり野菜や果物は安い買物とは言えない。同じアジアのはずなのにタイとはえらく違うものだ。
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| オルホン川での食事 |
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カラコルムの観光は順調にいった。午前中はサファリパークならぬ「草原パーク」みたいな感じで、車で馬やヒツジ達の間を駆けた。オルホン川というきれいな川の傍で食事。涼しく澄み切った快晴のもとサンドイッチを食べていると、なんだか幸せな気分になってくる。その後、アハと一緒に釣りにも挑戦したが、お約束どおり坊主。
(写真左:オルホン川での食事)
それからエルデン・ゾーという古い仏教寺院を見学。チベット仏教の美しい仏像などを見ることができた。最後に、泊めさせて貰っているおじさんの知り合いのゲルへ行くことになった。ツーリストゲルではない本物のゲルだ。市内から約30分。遊牧民族なのだから当然だが、途中より道なき草原を走る。周りは360度草原。すばらしい。何度も書くようだが、内モンゴルではこうはいかない。大草原は同じなのだが、小さな丘などがたくさんあって、こんなに平面ではないのだ。
19時を過ぎた頃に到着。まだまだ明るい。早速ゲルの中へ。中は結構きれいである。全体的にオレンジ調で統一されており、それが様々な模様と相まって美しい。ツーリストゲルと違い生活の匂いもする。それがちゃんとした家庭にお邪魔させて貰っているのだといういい緊張感も持たせてくれる。もちろんここでもツーテンチャイを振る舞われた。そしてここでたくさんの乳製品を食する事になる。 (写真右下:ゲルの中)
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ゲルの中 |
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先ほどはあまり触れなかったが、乳製品にかけてはモンゴルはなかなかである。乳やチーズといったものは豊富にある。味も中々だ。ヨーグルトなんかも美味しい。そしてゲルの中でも、乳を様々な物に加工して食べているのだ。ウルムやアーロールなどといったものがその代表。たくさんあって書ききれないが、すべて乳から作られている。もちろんうまいものもあれば、まずいものもある。好みによるだろうが、すこし匂いがあるので苦手な人も多いかもしれない。
話はそれるがツーテンチャイを頂きながら感じたのは、モンゴルは意外にも男性社会であるということだ。お茶を入れて頂く順序も男性から、座る場所も日本でいう上座である。これはもちろんアハのおじさんの家でも同じで、ツーテンチャイから食事、そして夜寝る時には自分だけマットレスを使うよう勧められた。ひろみさんらに譲ろうとしたのだが、それはモンゴル人の礼儀に反するということで有り難く使わせてもらった。どこかの団体が聞いたら怒り狂いそうなこの習慣。それでもなかなか居心地がいいなあ、などと思っていたのは自分が男だからだろう。
アハが馬を連れてきてくれた。久しぶりに乗馬。アハもおじさんも乗馬が上手い上手い。しかもいつの間にかモンゴルの民族衣装であるデールも着込んで来ている。とにかくカッコいい。馬が歩いていようと何してようと、サッと馬にまたがるとそのまま颯爽と走り出して行く。見事だ。モンゴル人は馬に乗ると見違えるようにカッコよくなる。自分もデールを着せてもらって早速乗馬。さすがに走ったりする事はできなかったが、ヒツジを追ったり写真を撮ったりして楽しい時間を過ごした。
翌日、ウランバートルに帰る際、叔父さんと叔母さんがデールを来て見送ってくれた。別れ際、何故かミルクを掛けられた。こんな習慣があるんだと思った。
長いようで短かったカラコルム滞在も終わり、無事ウランバートルに戻って来た。ここはやはり首都。物に溢れていると思った。3日ぶりに風呂にも入った(笑)。もうすぐタイ帰国へのカウントダウンが始まる。
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