4.美しき九寨溝と水なき黄龍 順調な移動だったが、しかしまたしても少数民族の人が前に座り、案の定バス酔いしたのか吐き出した。(実は四姑娘山でも前の席の少数民族の人が吐いていた。。)今日は窓を開けて外に吐いているので取り敢えず安心していたのだが、どっこい吐いた一部が自分の窓ガラスに当たり、窓からの景色を楽しむ事ができなくなってしまった。(途中洗車タイムがあったので良かったが) 17時半に川主寺を通過。空港ってこんな所にあったのかと驚く。遠くに雪山も見えるが、四姑娘山の迫力には到底敵わない。 19時、ようやく九寨溝のバスターミナルに到着する。11時間、長かった。寒さを覚悟していたが、涼しい程度でちょうどいい。安宿はバスターミナル付近にはなく、九寨溝の入口を越え、更に2kmほど歩いた付近にある。今日も明日の撮影に備えて早めに寝る。 長年思いを馳せていた九寨溝にようやく来る事ができた。九寨溝とは、もともとチベット族の村が9つあったことから、この名がつけられた。世界でも希少な美しき水の峡谷で、手つかずの原生林の中に大小108の湖、泉、滝などが分布しており、その自然が織り成すエメラルドグリーンの世界は中国のイメージを覆すほど。水の透明度の高さは、岩に含まれるカルシウムの影響らしい。否応でも胸が高鳴る。
翌朝、7時前から九寨溝チケット売り場に並ぶ。噂には聞いていた激高チケット(220元+バス代90元)を購入し、バスに乗り山頂を目指す。 あまり何も考えずに来てしまったので、バスの終点である原始森林まで来てしまった。九寨溝は入口から続く「樹正溝」と、その先2つに分かれている「日則溝」、「則渣 ![]() 天候は曇り時々晴れ。長袖のフリースを着てちょうどいいぐらいの気温だ。決して寒くはない。ところでこの原始森林。よく分からない。周りに山が見える程度だが、他に何かあるのか。奥に続く遊歩道もあるようだが、九寨溝へは美しい水を見に来たのですぐさま次のバスに乗り、少し戻った箭竹海で降りた。 8時30分、箭竹海。 初めて目の当たりにするコバルトブルーの水。美しい。今日の天候は快晴ではないが、ある程度曇っていた方が撮影には向いている事もある。実際強すぎる日差しは、九寨溝のような反射の激しい水面では向いていないかもしれない。
箭竹海からはきれいに整備された遊歩道を歩く事にした。新緑の緑の中、美しい水が辺りを流れ、その心地良い水音を聞きながら歩くのはなんとも贅沢なものだ。途中、小さな滝などもあり退屈しない。幸いほとんど下りなので足も軽い。 9時30分、熊猫海に出る。昔パンダが水を飲みに来たのでこの名前が付いたとのこと。ここは更に一段とコバルトブルーの青さが美しい。そして深い。 車道とは反対の山側の道を歩き、熊猫海瀑布に出る。が、水量が少ないよう水がない。枯れ上がった滝だ。 そしてここから次の五花海までは本来なら美しい小川が流れるハイキングコースなのだが、、水がない。でもしかし、水音の代わりに小鳥の鳴き声が耳を楽しませてくれ、美しい水の代わりに鮮やかな新緑が目を楽しませてくれる。空気もおいしい。
そして10時。いよいよ五花海に出る。 ここも青い水が美しいのだが、何より水底に沈んだ木々が多くとても絵になる。カルシウムの影響で腐らずに残っているとの事だが、さすが九寨溝でも1、2を争う名所、見事である。 ここでも再びシャッターを切りまくる。これだけの被写体があって「撮るな」と言う方が無理であろう。まるで子供のように夢中になって、シャッターを切りまくった。本当に信じられないような色彩である。これが九寨溝か。
以下動画もどうぞ。
五花海を満喫した後、再び歩き11時頃、珍珠灘に到着した。 「ここは何だ?」最初の感想である。説明すれば今までの水が一枚の大きな岩の上を緩やかに流れている。花なども咲いて綺麗なのだが、何故こんなに人がいるのだ?ツアー客もたくさんいる。よく分からない。そう思いつつ先に進むとその理由が分かった。 階段を降りると、見事な珍珠灘瀑布がそこにあった。
幅200m、落差40mもの滝である。通りで人が多い訳だ。滝にはそれ程興味はなかったが、それにしても湖やら、灘やら滝やら色々楽しませてくれる。
ここから次の見どころまで約2kmとの表示があったので、ここで再びバスに乗ることにした。ちなみに遊歩道にはたくさんの標識があり、道に迷う事はあまりない。周辺地図に、距離まで示してある優れものである。遊歩道の整備度に加え、たくさんの清掃員がおり、中国の九寨溝に対する姿勢がよく分かる。もちろんゴミなどない。 「日則溝」と「則渣 ![]() ここからは入口の方向(樹正溝)に向かって足を進める。上から下って来たバスに乗り込み「犀牛海」で降りる。長さ1023m、幅195mの大きな湖である。もちろんここも深い青が美しい。
そのまま「老虎海」まで足を進める。ここの青色もこれまでとはまた違って、何と形容すればよいのだろう、滑らかな藍色に近い。どうすれば自然にこのような色が作られるのであろうか。どれだけ見ていても見飽きない。溜め息が出るほどの色彩である。 普段は自分の写真など撮らない自分だが、思わずすれ違った中国人に撮影を頼んでしまった程である。
犀牛海からはずっと車道と反対側の道を歩いていたのだが、ここで一度樹正瀑布を見る為に車道側に出る。この頃になるとさすがに結構足が疲れてきて、歩くのが辛くなってきた。12時45分、滝に到着。まずまずの滝かな。先の2つの滝の方が迫力はある。 再び山側の道に戻り、次の見どころ「双龍海」と「臥龍海」を目指す。 ちなみに車道側の道には結構ツアー客など多く人が歩いているのだが、こちら山側の遊歩道には何故か驚くほど人が少ない。空気もおいしく自然に囲まれたいい場所なんだけど、と思う。
が、いまいちよく分からない。水の中に龍の姿が見えると思っていたのだが、ビューポイントが分からない。かろうじてそれらしき姿は分かるのだが。。 まあ、こんなもんかなと思いつつ次の「火花海」に来る。 ここもよく分からない。火花?どこが。。水はもちろん綺麗なのだが、他と何ら変わりはない。でも、少し疲れていたのであまり気にせず先に進む事にした。 ちなみに龍の姿や花火といった謎は、帰りの際車道側を歩く事によって解決される事になる。 14時、先の観光センターに戻り軽めの食事をとる。ここからもうひとつの峡谷「則渣 ![]() その後、バスに乗りすぐ下にある「五彩池」へ。ここは先の「五花海」と並び称される美しき場所である。
到着して驚く。素晴らしく水が澄んでいる。
やや水量が少ない気がするが、それでも水の透明度、そして名の通り様々な色合いを見せてくれるこの池は、九寨溝でも1,2を争う場所であろう。 何故か輝きを放っているようにすら見えるのは気のせいだろうか。やや風が出てきて水面が落ち着かないが、噂に違わぬ見事な池である。 一応これで一通り九寨溝を見学した訳だが、1つ気になることがあった。 先の龍と火花である。先ほどバスに乗っていた時、車道からは結構な視界が開けていた。もしかしたら車道側から見ればまた違った景色が見られるかもしれない。そう思い、先に寄った「老虎海」でバスを降り少し歩く事にした。尚この辺り、すごい人である。ツアー客が大半だ。 16時。樹正群海近くまで来て驚いた。先に山側で歩いていて1つずつ近くで見ていた湖が連なって見えるのだ。なるほど、こういう訳か。 そして臥龍まで来てついに龍の姿を見ることができた。これだったんだ。美しい龍が水の中で横たわっている。そして嬉しいことに、その先にある「火花海」でもその火花を見ることができた。胸につかえていた物が取れた気がした。
16時30分、再びバスへ。さすがこの時間は帰る人で溢れている。足の疲労もかなり酷く、食事もかなり高かったのでまともに食べていなかったが、非常に満足した1日だった。10年来の希望が叶ったのだからそうだろう。 フラフラになりつつ、翌日の黄龍行きのバスチケットを買う(38元、7時発)。明日も期待の場所。頑張って撮影するぞ。
翌日も6時前に起床。とても良い天気。はて、これが吉と出るか。30分掛けて歩き九寨溝バスターミナルに到着。黄龍行きのバスにはまだまばらにしか人が乗っていなかったが、結局半数ぐらいの人で出発した。 驚いた事にこのバスにはちょっと年上の日本人ご夫婦と、同じく日本人のご老人が乗っていた。珍しいものだ。話を聞くと、このバスは10時ぐらいに黄龍について、15時までそこで停車し、その後九寨溝に戻って来るらしい。もちろんそれに乗って帰ることも可能。観光中は荷物もバスの中で預かってくれ、九寨溝まで戻らず途中の川主寺などで降りても良いそうだ。これが本当なら助かる。帰りの足をどうしようかと思っていたところだったので。
早速川主寺までの運賃20元を払い、荷物をバスに預けたまま黄龍観光に出かける。入場料はまたしても200元と高い。でも九寨溝の価格は決して高いとは思えなかった。それほど素晴らしかった。黄龍はどうだろうか。 ところが、先にチケットを買った日本人ご夫婦から意外な言葉が。 「水量まだ少なく、一番上の五彩池しか水がないらしい」 売り場のお姉さんも親切にその旨を説明してくれた。その上で、 「チケット買う?」 と聞いてくる。もちろん買う。ここまで来て黄龍を見ない訳には行かない。幸い五彩池は黄龍の中でも一番美しいとされる湖。迷うなくことチケットを購入した。そして黄龍の入口に立つ。 黄龍。四川省松潘県の東、約40キロの所に位置するエメラルドグリーンと、白色に輝く峡谷にある湖沼群。カルシウムの沈殿によりできた奇景が黄龍の特長で、自然が作り出した棚田にも見える。水は玉翠峰などからの雪解け水。1年中楽しめる九寨溝と違い、路面が凍る冬期は観光ができない。5月なら大丈夫だと思っていたのだが、やはり美しい黄龍を見るにはベストシーズンである夏から秋に来なければならなかったようだ。 意外なことに黄龍にはロープーウェイがあって、一番上にある五彩池近くまで一気に行けるようだった。平均3000mを越える高地なので体が弱い人にとってはこのような配慮は嬉しい。だが、こちらは体だけが自慢の貧乏パッカー。ご夫婦と共に、もちろん歩いて五彩池を目指す事にした。 歩き始めるとすぐに石灰のくぼみがたくさん現れた。確かに水がない。残念だがこればかりは仕方がない。
ちなみにここも九寨溝同様きちんとした遊歩道が整備されている。非常に歩きやすく、自然を破壊することもない。もちろん清掃員も大勢いて、ゴミ1つない。共感できる姿勢だ。 標高3000mとあって少し警戒していたが、峨眉山で鍛えた体力と、四姑娘山で慣らした高地対策のお陰で非常に快調に足が進む。 時折、水を湛えたくぼみを見かけるが、やはり澄み切ったブルーが美しい。五彩池が楽しみだ。 快調に飛ばす事1時間15分、ついに五彩池に到着した。途中もし撮影をしながら来たらもう少し時間が掛かったと思う。 美しい。何という色合い。
真っ白なくぼみに青い水がとてもよく映える。まるでホテルのプールのような色彩。これが自然にできたというのだから、本当に驚きである。近くから、そして展望台からやはりシャッターを切りまくる。それにしてもどれだけ眺めてもうっとりするような色である。大変だったが、ここまで来て良かったと思う瞬間である。
1時間近く五彩池を楽しんだ後、下山。下りは一層早いものだ。1時間弱で入口に着いてしまった。今回は水量が少なかったが、是非水で溢れる黄龍も見てみたいものだ。 随分早くバスに戻ってきてしまったので車内で休んでいると、意外な事に15時過ぎには乗車していた中国人が皆戻ってきた。驚きである。ちなみに黄龍にはバスこそたくさん停まっているが、ほとんどが観光バス。個人旅行で来ていると結構足の確保が大変かもしれない。まあ、その場になれば何とかなるのが中国だが。 バスは順調にもと来た道を走り、16時30分には川主寺に着いた。ここで中国人学生カップルと、先のご夫婦とで松潘までタクシーをシェアすることになった。1台25元(5人だったので1人5元)という格安で松潘まで来てしまった。 何がすごいってこの南京から来たという中国人カップル。むちゃくちゃ強気で交渉する。特に女性の方。最初から喧嘩腰。交渉する先々で敵を作っている。可愛い顔してるのだが、正直怖い。
松潘バスターミナルで翌日の成都行きチケットを購入(76元、6時発)。その後、宿をこれまた強引に10元という格安で決めしまい、皆で食事となった。少し松潘の街を散歩した後、部屋に戻る。今日も充実した一日であった。
5.世界遺産「大足」と、仏の里「安岳」 Homeにもどる |