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2001年1月1日〜7日
From Chaingrai
カンボジア旅行記






タイでは日本の正月にあたる1月はあまり休みが取れないのだが、今年は運良く1週間程の休暇が取れたので以前から行きたかったカンボジアのアンコールワットに行く事にした。カンボジアが隣国というタイ在住の嬉しいところだ。


アンコールワット


タイの北部に住んでいるのでまずバンコクまで行かなければならない。いつもはバス利用だが今回は気分を変えて夜行列車で行こうと思い、タイ北部最大の町チェンマイへ行く。チェンマイ発の列車が1月1日の元旦なので、さすがにこの日ばかりはタイとはいえみんな家にいるだろうと思っていたが、何と既に満席。。やはり寝台は人気があるようで当日券など難しいようだ。何とか「座席」だけは残っていたので、切符を入手する事が出来た。一晩座りっぱなしだが。。

15時20分、チェンマイからバンコクに向けて列車が発車する。元旦だと言うのに、結構な混み具合だ。カオニャオ(もち米)とガイヤーン(焼き鳥)を買い、長期戦に向けて備える。
列車はのろのろと走る。時刻表などないのでどこをどのくらいで走っているのかなんて、まったく分からない。ただただ、深い森や川が続く中を走り、寂れた駅で停まったりする。一人ですることもないが、まだ風景が見られるうちは良かった。

夜になると、当たり前だが暗くなる。
列車の中は薄いオレンジ色の光が灯され、幸い真っ暗闇ではない。ただ乗ってからずっと座りっぱなしなので、尻が痛い。深夜になって来ると眠れない皆の顔にも疲労感が漂い、あまり「いい雰囲気」ではなくなってくる。


 


気になった出来事があった。
乗り合わせた車両に、坊さんが居た。茶色の袈裟を着たタイの坊さんだ。タイでは坊さんは王様や両親と並びとても尊敬される対象で、女性など話はできても体に触れる事は許されていない。タイでは大切な存在である。
その坊さんが、狭く込み合った座席で横になって眠っていた。混んでいた座る場所がない人もいるのに、だ。坊さんの上、結構年もとっているので、注意する人もあまりいない。暫くしてたまりかねたタイ人男性が何か小言をささやくと、体を起こし座るようになったが、見ていてあまり気持ちのいいものではなかった。タイでも坊さんの素行の悪さが問題になる事がよくある。


うとうとできたのか、気付くと朝になっており外の風景がこれまでのものとは違っていた。
そこそこ建物が現れ、人々の生活感が伝わって来る。踏切や自動車も増え、町に近付いている実感がある。
午前6時30分、無事バンコクに到着する。

さて、アンコールワットまでどうやって行こうかな(笑)。実は急遽決まった休みなので、あまり事前計画を立てていなかったのだ。まあ、いい。とりあえずバンコク駅にあるツーリストインフォメーションにでも行ってみるか。
暗い人ゴミの中を描き分けインフォメーションで尋ねると、その場にいた怪しげなタイ人に「1000B でシェムリアップまで行く」とのことだった。シェムリアップとはアンコールワット観光の起点となるカンボジアの町。1000Bはちょっと高いかな、と思いつつあまり時間がないのでそれに決めた。バンコク駅前にあるミニバンに乗れと言う。

ミニバスはすぐに出発し、バンコク市内を走りだした。9人ほどは乗れるバスだが、既に何人か乗っている。カオサンや変な宿などで人を拾うと、ようやく高速道のに乗り西に向かい始めた。
客は半分ぐらいが白人で、残りがアジア人。国籍までは分からない。ただ、斜め右前に座っているショートカットの女の子がちょっと気になった。大きなサングラスをしているのだが、結構可愛い。

バスの窓からは強い日差しが入って来る。昨夜はほとんど寝れなかったので、暫くバスに揺られていると眠くなって来る。と言うより、あっという間に眠ってしまい、目が覚めるとタイとカンボジアの国境であるアランヤプラテートに着いていた。
ここで出入国手続きをしなければならないのだが、日本人はビザが必要。国境でも取れる(30ドル)ようであったが、事前に地元の旅行会社で取っておいた。念のために。


さて、ここからが大変であった。
まず、タイから走ってきたミニバスはここで終わり。カンボジア領には入れない。従って乗り換えが必要なのだが、ガイドがいる訳でもなく、しかも出入国手続きをしている間にみんなバラバラになってしまい、訳が分からない。手続き自体は簡単であったが、乗り換えの車を探すのに一苦労した。結局先程ミニバスで一緒だった人達を見つけ、チケットの書かれた会社名の車を探し出し、何故か交渉の末、ようやくピックアップトラックに乗車する事が出来た。

この車の荷台で移動
14時過ぎ、ようやくアランヤプラテートを出発。ようやく見つけた車だが、何故かピックアップ車の「荷台」に乗る羽目になってしまった。まあ、タイでは乗り慣れているし、ピクニックみたいで楽しいが。

荷台のメンバーは白人2人に日本人の女の子2人、それに自分に、なんとサングラスの女の子。しかも話してみて分かったのだが、この子タイ人のようだ。ラッキー!拙いがタイ語が通じる。
荷台移動は結構楽しいものになった。白人主導でゲームをやったり、歌を歌ったり、旅の話をしたりと退屈しなかった。景色もカンボジアの広大な平野が広がり、何よりアウトドア(?)なので皆の気分も高揚する。

ただ、道は悪かった。
もちろん舗装などされている訳もなく、すべてが土の道。走るたびに砂埃がすごい。通行量も多いのか、道に大きな穴ができている。と言うよりは地雷で空いた穴かと思ってしまう。何せ大きなものは深さが1m以上もあるからだ。
途中で食事などを摂り、再び荒野を走る。
長い。。全くどこを走っているのか分からないのだが、全く終わりそうな気配もない。アランヤプラテートからシェムリアップへの道は、悪路でパッカーでの間でも有名だったが、やはりこの長さもその要因だろう。

夕方になり、日が傾いてくる。
何とか明るいうちに到着したかったが、どうも難しいようだ。「カンボジアの夜は出歩いてはならない」と色々な本に記載されていたが、いきなりその忠告を破る事になりそうだ。仕方がない。
日が沈むと一気に暗くなる。もともと何もない荒野なので、月明かり以外明るいものはない。と言うより、月明かりがあるだけましだ。新月だったらそれこそ真っ暗闇である。

暗くなるのと同時に寒さも襲ってくる。南国とはいえ1月はそれなりに気温は下がる。まして風に当たりっぱなしなので、体温も奪われてゆく。持っていたウィンドブレーカーを着込む。それでもまだ温かくはならない。
ふと気付くと、サングラスの女の子(名前は「アップル」だと知った)が寒そうにしている。最初からパジャマみたいな薄い服しか着ていなかったのだが、今も薄いショールのような物を首に巻いているだけだ。防寒具は持っていないらしい。
着ていたウィンドブレーカーを差し出す。アップルが断る。しばらくしてやはり寒そうにしているので差し出す。アップルが断る。今度は強めに言う。「着なさい」。アップルがお礼を言って着る。自分は予備の長袖を着る。遠慮するアップルはとても可愛く見えた。


午後11時、ようやくシェムリアップの町に到着した。長かった。。。
まず連れて行かれたのが安いゲストハウス。3ドルほどで泊まれるので、ほとんどの人が疲れからかすぐにチェックインしていたが、アップルや日本人の女の子は気に入らないようだ。「一緒に他のを探しましょう」と誘われたので、そのまま付いてゆく事にした。

ちょっと歩いて割ときれいなホテルを発見。今日はとても疲れたのでちょっといい宿にしようと言う事で、チェックイン。48ドルの宿泊代を4人で割って、1人12ドル。で、4人部屋等もちろんないので3人部屋にエクストラベットを置く。無論エクストラベットは自分。12ドルとかなり奮発した料金であったが、まあいい。エクストラベットでもかなりふかふかで気持ち良かった。
ちなみに洗髪したら、頭を流した水がまっ茶色になっていた。相当な埃を被っていたようだ。もうひとつちなみに、若い女の子3人と同室に泊まるなんて、この先にも後にもこれっきりである。

シェムリアップの町
翌日、48ドルは高いので宿を変えると話したらアップルも変えたいとのことで、一緒に探しに行く事にした。
意外にも(やはりタイ人?)一泊3ドルのドミトリーの宿で合意した。ドミトリーではあるが、他に宿泊者はいないので二人きりである。ちょっと嬉しい。


さて、観光。シェムリアップの町からアンコール遺跡までは6,7km離れているので、通常バイタク(バイクタクシー)をチャーターしなければならない。大体1日のチャーターで7ドル前後。2日で10ドルでまとまったのだが、実はこの交渉、ほとんどアップルがしてくれたのだ。しかもめちゃくちゃ流暢な「英語」で。タイ人が英語が苦手な事は知っていたので、吃驚して聞いてみると、なんと彼女、ロサンゼルスで働いていて、休暇を取って旅をしていてとのことだった。吃驚した。童顔でちょっとあか抜けており、変わっているなあとは思っていたが、まさか「ロス勤務」とは。アップルを見る目が急に変わってしまった。

昨夜車の上で上着を貸したぐらいまでは確実にこちらがリードしていたのに、ここに来てすっかり形勢逆転となってしまった。流ちょうに操る英語、言われてみれば身の振る舞いも白人っぽい。価格交渉もやってもらい、自分は既にアップルの後について行くだけの「金魚のフン」と化している。
もちろん観光も一緒、かと思ったが、それは違うらしい。見たいものは自分のペースでゆっくり見る、とのこと。やはりこの辺りは徒党を組みたがる日本人とは違う。まあ、それも良し。

さて、アンコール遺跡観光。
ご存知の通り、アンコール遺跡はカンボジアを代表する遺跡である。12世紀に30年あまりかけて作られたヒンドゥー教寺院がもとになる。1400年代にプノンペンが首都になると一時忘れられてしまうのだが、今度は仏教寺院として再び時の王に使われるようになる。以後、忘れられたり戦火に晒されたりと幾度もの危機を乗り切って、内戦が終わりを迎えつつある1992年に世界遺産に登録された。危機遺産にも登録されるが、日本の手助けなどもあり現在は危機遺産からは外れている。

暫くバイクで走ると検問のような場所に出る。どうやらここで入場料を払うようだ。巨大なアンコール遺跡群なので色々見るには数日かかるが、入場料が結構高い。3日券を購入したのだが、何と40ドル。さすが国の収入の大きな支えとなっている観光地だけの事はある。
午前中はアンコールトムを見学した。年代を感じるヒンドゥーの寺院に、大きな顔が彫られた仏教寺院がある。これは仏教の観音様であり、四面に顔があるのはすべての方向を見渡すためだと言う。アジア人の自分が見てもインパクトがあるので、白人などはびっくりだろうなあと思う。また壁や柱に彫られた彫刻も見事で、昔の神話等を描いていると言う。


アンコールトム 壁画 年代を感じる遺跡
四面に彫られた観音様 柱の彫刻も見事 周囲には色んな遺跡が点在している


昼に一度宿に戻る。昼食を食べつつ、市場などを歩く。特に目ぼしい物はない。少し歩けば、観光客とは無縁の一般庶民の市場がたくさんある。麺を食べたが、味はタイの方がおいしい。値段は安いのだが。
夕方から今度はメインのアンコールワットを見に出掛ける。

やはり素晴らしいものであった。
予想よりは小振りであったが、左右対称の見事なバランスをもって佇んでいる。入り口で見える影と重なった図は、まるで額縁に入れられたような美しさである。彫刻も修復された部分も多いが、細かな物が繊細に描かれている。ヒンドゥー教の神話、中心置かれた仏教の仏像。見事である。
遺跡に座りながら沈みゆく夕陽を眺めて宿に戻る。

アンコールワット 柱の彫刻 壁画も見事

夕方からは先日の日本人の女の子2人と、アップルとで食事に出掛けた。
カンボジア料理、と思いきやアップルの希望でタイ料理になった。ここまで来てタイ料理?と思ったが、自分以外3人がそれに賛成のようで、あっけなくタイ料理やに向かった。まずまず美味しかった。アップルがタイ料理屋のおやじと、「同じタイ人同士頑張りましょう」と言っているのを見て微笑ましくなった。


翌日もバイタクに乗って観光。
アンコールワットやトム以外にも、この地には星の数ほど沢山の遺跡がある。有名なものから名前すら聞いた事のないものまで、ガイドがおらず場所はバイタクの運ちゃんにお任せだったので、適当に連れて行ってもらった。アンコールワットが目的だったので、とりあえずはもう安心である。

観光コースは同じなのか、時々アップルにも会った。一緒に写真を撮ったりもした。撮る度に腕組みをされるのにはかなりどきっとしたが、本人はあまり気にしていないようだ。


プリア・カン ニャック・ポアン タ・ケウ

東洋のモナリザ? プレ・ループ タ・プローム 回廊


宿に戻り、この夜も4人で食事をした。
日本人の女の子達は明日からプノンペンに行くとのこと。またアップルも早朝からプノンペン、そしてベトナムへ行くらしい。自分はトンボ返しでバンコクに戻らなければならないので、今日が最後の夜である。
みんなで最後の食事を楽しくし、宿に戻る。

ドミトリーではあったが、結局ここに来てからこの部屋は誰も来ず、アップルと二人で独占状態であった。最後の最後まで色々な話をしてくれた。アンコール遺跡をあまり勉強してこなかった自分の為に一生懸命教えてくれたり、自分の拙いタイ語を理解しようとしてくれた。
アップルは何をしているのかな。これ以後連絡は取っていないが、また会いたい旅の人の一人である。
(アップルのとのことはこちら「コラム:アップル〜ちょっと甘いカンボジア旅日記〜」をどうぞ)


翌朝プノンペンへ向かうアップルを送り、午前7時半にタイとの国境であるアランヤプラテートへ向かう。いや戻ると言った方がいいのか。今度は先の経験を踏まえ、少し割増料金を払って「車内」に乗る事にした。もう埃まみれは遠慮したい。
再び悪路に向かうこと6時間、午後1時半にアランヤプラテートに着いた。今度は意外と早かった。今夜はここアランヤプラテートに一泊する。タイに戻ってきたからには焦る事もない。ここからバンコクまでは列車に乗りたい。寂れた宿にチェックインし、町を歩く。国境からはちょっと離れているので、特に変わった物もない。ぶらぶらして早めに就寝する。

翌日は午前6時半の列車でバンコクに向かった。
短い時間ではあったが非常に充実したアンコールの旅であった。お昼には列車は無事バンコクに到着した。


データ
チェンマイ→バンコク(座席) 161バーツ(3等/座席)
バンコク→シェムリアップ 1,000バーツ
アンコール周辺のバイタクチャーター 5〜7ドル/日
アンコール遺跡3日券 40ドル
アランヤプラテート→バンコク(列車) 48バーツ(3等/座席)






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