前回のヒマラヤの旅以来、毎年海外には行っているのだが、旅行となるとまったくの音沙汰である。最近になって突然旅をしたくなって、考えた末、韓国へ行く事にした。短い期間で楽しめて、航空券が安く抑えられるのが決め手だ。また今回は韓国という事で、嫁も一緒に行く事になった。ただし、そこは我が旅日記。ツアー利用ではなく、あくまでバックパッカーの旅(個人旅行)を前提とする。何が起きても文句を言わないと約束させ、出掛けることになった。 韓国という国はいろいろな思いがある。 ネットやニュースでは正直悪い印象しかない。反日もあるし、日本には逆に反韓もある。ただ、これまで中国留学中や、インドなどの旅先、日本国内においても結構な韓国人と一緒に行動したりした。変わった奴もいたが、圧倒的にいい奴ばかりであった。 何が本当なのか。 いずれ自分の目で見に行くしかないと思ってはいたが、ついに今回それができそうだ。 色んな期待を込めて韓国に行く。 当初、安い航空券につられてチェジュ航空を考えていたが、昼出発−朝戻りと、初日と最終日が全く死んでしまうので、やや値は上がるが大韓航空(朝発−夜戻り)を予約。チェジュに比べてひとり7,000円の出費が嵩むがそれで2日買ったと思えば安い。リーマンパッカーなんだし。 また、時間を有効に使う為にソウルで泊まる2日間の宿、そして韓国高速鉄道KTXは事前予約した。結果、これは時間節約と言う意味で良い選択であった。 午前7時半に中部国際空港に到着する。ちゃんと2時間前に行ったのだが、大韓航空のチェックインカウンターはもの凄い行列となっていた。ほとんど日本人。平日の朝からどうしてこんなに列ができるのか不思議である。 何度も目にした事のある水色の機体へと搭乗。飛行機は2階建てになっており、その2階部分に案内された。席に着いてびっくり。シートがめちゃくちゃ広いのだ。 「これ、エコノミーですか??」 思わず聞いてしまったが、エコノミーらしい。これまでのエコノミーの常識を覆す広い空間。フラットにまでなる専用のシート。イスを倒されても画面が動く事もない。大韓航空はすごいぞ、と思いながらシートで遊んだりして2時間のフライトを過ごした。飯は普通。
11時過ぎに韓国、仁川(インチョン)空港に到着。 キムチの匂いがするという噂があったが、そんな匂いはしなかった。誇張しすぎだ。空港は綺麗で大きかった。入国・両替を済ませ、市内までのバスを待つ。大韓航空は予約をするとKALリムジンバスなるものが無料で利用でき、空港⇔市内の往復がタダになる。これを利用しない手はないので、早速乗車。地下鉄でも市内へ行けるそうだが、やはり節約したい。 バスの窓から見える韓国の第一印象は、「中国みたい」であった。 到着日が曇りという天候もあったかもしれないが、埃などの淀んだ空気に建設中の多くの建物、茶色の河川、寂しげな団地の群れ、、などだ。この印象は韓国に滞在すればするほど強くなってゆくのだが、それは逆にここが大陸、特に中国と陸続きだと言うことにもつながる。そして何故か日本よりもまだ発展する余地があるような気がした。 13時ちょっと前にソウル駅に到着。下りてちょっとびっくり。 ゴミが多い。 道路の至る所にごみが散乱している。集められたゴミも多ければ、完全に捨てられたゴミ多い。これもアジア、どちらかといえば中国に近いものがある。アジアとして見れば全く普通の環境だが、先進国として見ればちょっと違和感がある。 とりあえず今日の宿泊先である明洞(ミョンドン)へ地下鉄で行く。
地下鉄の自販機には日本語表示ができ、購入は楽である。ただ、システムを理解していないと、買うのは大変だ。「初乗り」とか「1回用」とか「チャージ」とかあるようだが、結局帰るまでにすべて理解できなかった。毎回、「1回用」で購入して、使い終わったカードの保証金(500w)を返してもらっていた。ちょっと面倒。。 明洞はソウルでも中心地でソウルのホテルもここに集中している為か、地下鉄からもの凄い人であった。予約しておいた宿にチェックインし、早速今日の観光へ。宿は立地を考えれば仕方ないのだが、かなり狭かった。 まずはソウルで一番見たかった宗廟へ。もちろん世界遺産。 李朝時代の1395年に建てられた歴史ある建物で、歴代王や王妃、そして功臣らの位牌が祭られている場所である。毎年ここで祭礼儀式も行われている格式ある廟である。 地下鉄「鐘路3街」で降り、5分ほど歩くと立派な門が見える。傍にチケット売り場があるので早速買おうとすると、「売れない」という仕草をする。理由を聞いても英語も日本語も通じないのではっきり分からないのだが、どうやら「フリーはダメ」と言っている気がする。意味が分からないので、入場口まで行こうとすると、近くの看板に「土曜日以外の自由見学は不可」と書いてある。なに!自由に見れないのか?毎日決まった時間に言語別のガイドが観光客らを連れてゆくらしい。次の日本語ツアーは14時半。今は14時。仕方ないので、チケットだけ購入し、時間をつぶす事にした。 門の前はちょっとした公園になっており、たくさんの老人で賑わっている。この風景は日本も同じような気がする。ただ、何故か碁の大会(?)が開かれているのか大勢の老人が碁に興じていた。
時間を待ってようやく入場。ちょっとした日本人のグループとなって行動する。ガイドの話によると、見学は大体50分ほど掛かるそうだ。 よく色んな国で白人が英語のガイドの説明を熱心に聞いている理由が、今回初めて分かった。説明等、中々良かった。 ここには歴代の王らの位牌が祭られていること。位牌がある建物に繋がる道が宗廟にはたくさんあるのだが、現世の王、そして歴代の王などの専用の道であって、それは一般人は踏めないということ。儀式が韓国人にとってとても重要な事など、ガイドブックだけでは知り得ない事を教えてくれた。先の王が通る道は、現在でもできるだけ踏まないようにとの注意がある。これなどもガイドがいなければその深い意味は分からなかったかもしれない。神聖で、タブーがある場所だからこそ、ある程度の自由見学を認めていないようだ。それは意味のある事だと思う。
宗廟の建物自体も趣があって良かった。 長ーい横長の建物に位牌が順番に収まっているそうだ。その前に広がる広い空間(広場)も神聖さや威厳さを高めている。是非一度機会があれば祭礼儀式も見てみたいものだ。50分だったが実に充実した観光であった。ただ、一部マナーの悪い日本人女性がいて、ガイドが説明をしているのに離れた場所に椅子に座ったり、べらべらと喋ったりしてうるさかかた。一度、その女性らが座って喋っているのをちらっと見たガイドが「ちっ」と舌打ちをしたのだが、拡声器を持っており結構大きな音となって響いてしまった。少し気まずい空気が流れた。興味がないのなら来ないで欲しいと思う。
宗廟の見学を終え、そのまま歩いて北側にある昌徳宮へ。こちらも世界遺産。 1405年に正宮である景福宮の離宮として造られた宮殿で、李氏朝鮮王朝の政務が行われた御所とのこと。中はとにかく広い。自由見学できる場所とできない場所がここにもあるのだが、自由に見られる場所だけでも色々見ていると結構疲れる。建物自体は韓国のお寺でよく見かける緑を基調とした立派なもの。石畳の広場や瓦造りの建て方は宗廟と良く似ている。王族が住んでいたと言う韓式の古い住居などは生活感があってよい。
見学を終え、時計を見ると16時半。まだ空は明るいし、夕飯までは時間もあるのでソウルにあるもう一つの世界遺産である「朝鮮王陵40基」を見に行く事にした。 朝鮮王陵40基とは李氏朝鮮時代の王、王妃達の肉体が眠る場所である。魂は先程の宗廟で、肉体はこちらと言う訳だ。519年という長い間王朝が続いたのと、それらすべての王、王妃の墓が残っている点、そして祭司がまだ続けられている点などが考慮されて世界遺産となる。登録されたのは44基中40基だが、ソウル市内にも手軽に行ける「宣陵・靖陵」もあるので観光には便利だ。 地下鉄「宣陵」を降りて、早速王墓を探す。 しばらく歩いてみたが、何故かなかなか見つからない。地図を見てもいまいち現在地が掴めず、ふらふらと歩く。時間が迫ってきていて、空もだいぶ薄暗くなり始めた。近くの人に何人か尋ねて、ようやく入口を発見。分かってしまえば近かったのだが、焦っていたのかちょっと冷静ではなかった。 入場料1,000wを払い入場。冬なので芝生なども一面薄黄色で寂しい。ここは広い公園になっていて、木々の間に散策路が作られている。登り下りも結構あり1周すると結構な運動になる。 墓自体は、円形状に石が囲まれ、そこに土がドーム状に盛られている形だ。何も知らずに見ても、かなりの確率でがっかり遺産になるであろう。歴史をしっかり勉強しておかないといけない代表的なものである。
見学を終えるともう19時。すっかり暗くなってしまったので、夕飯を食べに明洞に戻る事にした。 地下鉄はもの凄い人のラッシュとなっていた。ちょうど帰宅時間が重なったのもあるが、日本の通勤ラッシュと変わりない酷さである。慣れない地下鉄と言う事もあり、明洞に着く頃にはへろへろになってしまった。だが、明洞はもっとすごい人がいてさらに疲れてしまう。 初日はプルコギとビビンバを注文。 疲れた体にビールが美味い。それ以上にビビンバも美味い。プルコギはすき焼きみたいでこれも美味い。キムチとかつまみとかたくさん小皿で出てきて、腹一杯になってしまう。予想以上に韓国の飯は美味かった。まあでも37,000w(2,700円)と通常の旅の飯と比べれば超高いので美味くて当たり前か。 帰りは明洞を散策して宿に戻る。平日の夜なのに、祭りみたいにたくさんの店や人で賑わっている。いやいや、初日から疲れた。
翌日は午前4時半時に起床。高速鉄道KTXの予約が6時半と早い為、早朝からの移動となる。 朝が早い為か明洞の地下鉄も静まり返っている。電車も全く来なくて静まり返っている。30分近く待ってようやく乗車。早朝とは言え、もうちょっと本数増やしてもいいと思うが。。 まだ暗いソウル駅は電飾で光り輝いている。さすがにここはもう人も多い。チケットを引き換え、無事乗車。定刻通りに列車が走りだす。300km/hという高速鉄道で、新幹線との競合にもなるKTXだが、正直新幹線にはまだ及ばない気がした。贔屓目なしにでもだ。車内の作りも新幹線に比べれば粗末だし、揺れも音も大きい。また走行中、特にトンネルや他の列車とのすれ違い時に耳鳴りがすごくする。ちょうど脱線事故が起きていた時期で、毎日のようにニュースでKTXの事が話題にもなっていた。 でも、まあ便利ではある。バスで4,5時間掛かるところを、2時間で行ってしまうのだから。しかも行きは41,100w(約3,000円)と新幹線に比べ半額以下。書き忘れたが、韓国は交通費が物価に対してとても安い。ここは良いところだ。 韓国の朝は遅い。明るくなるのがとても遅い気がする。6時はまだ真っ暗。7時を過ぎてようやく明るくなり始めた。初めてソウルから抜け出したのだが、窓から見える景色はやはり中国のようである。都市と都市との間の中途半端に開発された河川や道路、五目並べの碁盤のようなアパート群、プレハブと平屋でできた民家。改めて中国の影響は大きいものだと思わされる。
見事定刻通りの午前8時18分に東大邱(トンテグ)に到着。目的を書き忘れたが、今日は大邱にある海印寺を目指す。その後、大邱から宿泊予定の慶州まで向かう。 海印寺へは大邱の地下鉄2号線「聖堂池」で降り、すぐ傍にあるバスターミナルからバスに乗る。大邱は結構な大きな町で、交通の要所にもなっているそうだ。 駅から外に出ると結構寒い。さすがに2月の韓国は冷える。地下鉄に乗り、バスターミナルへ。田舎のバスターミナル、って感じだ。どちらかと言うとタイのそれによく似ている。幸い「Heinsa(ヘインサ)」と英語の表記があったので、その窓口でチケットを購入。午前9時20分時に出発だ。 バスは最初高速道路を走り、降りてからはどんどん山の方へ向かって走る。畑や木々、低い建物がひしめく田舎をバスは走る。海印寺に着くちょっと手前で係員が乗車してきて、入場料を徴収する(3,000w/人)。立派な門を過ぎ、しばらく走ると大きな建物の近くでバスが停車。どうやらここが海印寺の入り口である。 標高は700mぐらいあるそうで、結構寒い。所々雪も残っている。道沿いに歩き、博物館を過ぎると地図が現れる。ここからさらにしばらく登らなければならないようだ。時期が悪いのか、個人の観光客は少ない。外国人が3割ほど、残りは韓国人。冬の里山を歩く事20分ほどでようやく海印寺の門に着く。結構息が上がる。
海印寺も韓国の世界遺産。今回も世界遺産巡りをしているので当然なのだが、ここはちょっと期待している。 ここを有名にしているのが八万大蔵経板。高麗王朝高宋1236年〜1251年の間に作られた仏教の木版本のことで、モンゴルの侵攻から国を守ろうと祈願して作られた世界最古のものである。その版数が81,340枚もあるのでこの名前で呼ばれる。そしてその一字一句に誤字脱字がないと言う。素晴らしい。多くのどこの国でもそうだが、昔の人は本当にすごい事をする。 長い通路と階段、門をくぐり、境内に入る。韓国古式のお寺の雰囲気がいい。緑を基調としたこの建物にもだいぶ慣れてきた。やはり日本人には仏教の寺が心地良い。静かな雰囲気と、仏様が我々を迎えてくれる。 中には古い石塔があり、階段の先には大仏殿がある。中ではたくさんの韓国人が床に頭をつけてお参りをしている。そしてその大仏殿の後ろに、八万大蔵経板を納めた建物(蔵経板殿)が見えてくる。 蔵経板殿にある本棚のような棚に、整然と八万枚の木版が並べられている。格子越しにしか見ることはできないが、その眺めは圧巻だ。残念ながら写真撮影はできないが、一見の価値があるお寺としてぜひ訪れるべきだと思う。
帰りはバスを降りた場所付近でおばちゃんに誘われるまま、食堂に入る。全く言葉が通じないが、「チジミ、チジミ」と言っているのでチジミを注文した。ちょうど食べたかった料理のひとつなのでこれも縁だと思った。味はまずまず。全く言葉は通じないがよく話しかけられ、何故かまっこりまでサービスしてくれた。
再びバスで大邱バスターミナルまで戻り、そのまま慶州行きのバスチケットを購入する。 午後2時半に大邱を出発。韓国のバスもなかなか時間通りに動く。都市間を結ぶ線の為か、先程の海印寺のものよりずっといいバスが使われている。乗り心地は大して変わらないのだが。 1時間ほどかけて15時半に慶州に到着。慶州では2泊の予定だが、宿の予約はしていないのでこれから探さなければならない。バスターミナル付近にたくさん安宿が集まっているそうなので気楽に考えていたが、実はこれが結構大変であった。 ここら周辺に集まっている大概の宿が「ラブホ」のようであった。駐車場の入口にカーテンがしてあったり、派手な看板が出ていたり、造り自体も日本のラブホとほぼ変わりない。とてもじゃないが入る気がしない。一応正統派バックパッカーなので変なプライドがある。ラブホじゃなさそうな宿でも、ほぼ「モーテル」と書かれており、やはり利用し辛い。しかも何軒か当たってみたが、何故かフロントには誰もいなかったり、居てもフロントで寝ていたり、追い出された所もあった。後で思ったのだが、ラブホなので昼間は従業員は寝ており、夜活動していたのかもしれない。
仕方がないので30分ぐらい歩き、ガイドブックにあった韓式の宿を当たってみたがこれも満室。みんな考える事は一緒か。もう腹を決めて再びバスターミナル付近まで戻り、初めて呼び込みのあった宿(モーテル)に宿泊を決める。まあ、ほぼラブホに近い造りだが、何とか耐えられるレベルだし、バスタブなど一通り揃って25,000w(約2,000円)だったのでここに決めた。何より疲れた。 食事の時間まではまだ少しあるので、少し休んでから散歩がてら慶州の街を歩くことにした。 まず向かったのはやはり慶州のシンボルで世界遺産の瞻星(せんせい)台。瞻星台とは、7世紀に作られた天文観測台で、一見ただの煙突のようだが、実は複雑で科学的な作りをしたものらしい。積み上げられた石の数は361個半。これは陰暦の日数に当たる。また中央の窓から上が12段、下も12段。1年12ヶ月、24気節を表しているとのことだ。 宿からは徒歩で30分ほどで着く。もうすっかり夕方になっているので、風がかなり冷たい。登山用のインナーダウンを着用しているが、手足は冷えてくる。 やがてだっだ広い公園らしき場所にでる。自転車がたくさん並べられており、お土産などを売る店もちらほら見える。どうやら到着したようだ。近くに世界遺産を示す石牌もある(ちなみに慶州の町自体が世界遺産に登録)。 そしてその先に瞻星台もあった。予想よりもずっと低い(約9.1m)。しかもチケット売り場もあるのだが、買わなくても外からでも十分見える。韓国人も数名はチケットを買って入場していたが、ほとんどの人が外から眺めている。迷ったが、外から見るだけにした。それでも十分よく見える。500w(約38円)なので金額の問題ではないが、どうしても近くで見たいものでもなかったので、これで良しにしよう。
そのまま先に進み約10分、今度は雁鴨池という庭園を見る事にした。ここも新羅時代の建物で、王侯貴族が船を浮かべて遊んだ場所とのこと。ここも色々な計算に基づいて設計された庭園らしいが、正直パッとしない。いくつかの建物と池があるだけのようにしか見えない。勉強不足だろうか。 帰りは半月城、そしてそこにある天然の冷蔵庫「石氷庫」、それから慶州金族が生まれたと言う「鶏林」を見学して宿に戻る。夕飯はバスターミナル付近にたくさんある食堂に入る。適当に入ったのだが、ここで食べたカルビは絶品であった。味も良く、とても柔らかい。下手な日本の焼き肉チェーンなど足元にも及ばないものであった。ちょっと驚き。一緒に食べたキムチのスープはいまいちだったがかなり満足(26,000w)。 2日目も良く歩いた。シャワーのお湯もよく出て、ゆっくり休む事が出来た。
データ:
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