Day1 知らなかった。 今回急遽2日間の休みが取れたので、近場であまり行っていなかった滋賀県(びわ湖)に出掛けたのだが、びわ湖の周りにこんなにたくさんのお寺があり、見事な仏像がたくさん残されているとは、全く知らなかった。 リフレッシュと彦根城を目的に出掛けたのだが、帰ってくると仏像の思い出ばかりが頭に残っていた。 7時半に自宅を出発。とりあえずは急ぐ旅ではないので、ゆっくりと一般道で滋賀に向かう。 昨日まで季節外れの台風が来ており、正直天気が心配だったのだが、未明に通り過ぎて出発の際は台風一過で見事な晴れとなった。今日は暑くなるとのこと。 朝の渋滞ラッシュを超え、関ケ原ぐらいまで来ると随分と車の数も少なくなり、代わりに見事な新緑の山々が迎えてくれる。 人一倍大きな姿を見せる伊吹山も、今は絶好の登山シーズンだろう。 びわ湖の北部に高月・木之本というエリアがある。ここは戦国時代の災禍をまぬがれて多くの観音様が守られてきた場所で、「観音の里」と呼ばれているとのこと。戦火は寺院や仏様をも焼き尽くすのだ。 以前訪れた中国の四川省も同じ理由で大足などには多くの仏像が残されている。 その中でまず訪れたのは、国宝にも指定されている十一面観音像が置かれた向源寺(渡岸寺観音堂)。 736年、聖武天皇の時代に大流行した病の除厄の祈祷の為に作らせたという観音様だ。戦国時代の戦火の際には地中に埋めて難を逃れたという話も残っている。 ナビに道案内を任せて午前10時半、向源寺の駐車場に着く。平日の為かほとんど車はない。日差しは強く車内にいると暑いぐらいだが、外に出てみるとまだ5月の涼しい風が吹いている。観光には絶好のシーズンである。
今回も愚息を連れての旅だが、まだ大人の歩くスピードにはとても付いて来れないので抱っこをして歩く。 駐車場から細い曲がった路地を歩くと、すぐに向源寺と書かれたお寺が現れる。ここには観音像はないので、もちろん観光客もいない。このお寺を背にしてさらに歩くと、すぐに渡岸寺観音堂に辿り着く。
新緑に映える仁王様の門をくぐると、境内が目の前に広がる。
別にこれが特別な風景ではない。一般的な境内に一般的な参道だろう。 ただ、澄んだ空気、新緑、静寂。平日の朝なので参拝客は自分達のみ。境内を歩く砂利の音。特別な風景ではないのだが、毎日仕事の日々を送る人間には、ひどく心に沁みる景色に映った。こういう時間もいいもんだ。 境内を少し歩く。参拝客は誰もおらず、静かな空間だ。きれいに掃除もされており、お寺に来るだけで心が洗われる感じがする。
拝観料300円を支払い、中に入る。 正面に仏様がおり、さらにその奥に十一面観音像へと続く通路がある。古い寺に似合わないような頑丈な自動ドアをくぐると、そこに観音様が置かれていた。
館内は撮影禁止なので、写真は絵ハガキから拝借。 写真では伝わらないのが残念。高さ196cmだから人よりちょっと高いぐらいだ。薄暗い館内、お香良い香りがうっすらとするその中に、そのすらっとした体の曲線が美しい観音様が安置されている。だが、何よりもその迫力がすごい。見ているだけで、どんどんと心の中に入り込んでくるようだ。これが国宝のオーラか。 驚くべきはこれだけ立派な国宝なのに、ガラスケースなどには入っておらず生のままを拝観することができる。もちろん写真や触れることはできないが、これだけで十分だろう。 館内には係りの人がいて簡単な紹介テープを流したり、質問に答えてくれたりしてくれる。団体客がやって来たのでここを後にしたが、最初から素晴らしいものを見せてもらった。 続いて向かったのは向源寺より車で15分ほどの場所にある己高閣(ここうかく)、世代閣(よしろかく)と呼ばれる文化財収蔵庫だ。 近くにある己高山には多くの多くの仏教的財産が有り、それらを保護管理している場所である。 駐車場に車を止めて5分ほど歩くとそれらしき建物が見えてくる。 係りの人に拝観料(500円)を払うと、近くにある己高閣から案内してくれる。 己高閣には鶏足寺にあった重文・十一面観音像、法華寺の薬師如来立像などが安置されている。ここでも案内のテープを聞き、その後境内を少し案内されて、また近くにある世代閣へ向かう。 こちらも非常に頑丈な建物になっているのだが、係りの人にその理由を聞いてびっくりした。 ここには薬師如来像とその十二神将立像が安置されているのだが、昔そのうちの5体が盗難にあったとのこと。そこで村の人がお金を出してこの立派な保管庫を建てたとのことだ。現在もその行方は分かっていないらしい。 何と罰当たりなことをするのがいるもんだ。そういえば先の向源寺でも非常に頑強な建物に安置されていたのを思い出す。誰かは知らないが本当に残念な話だ。 館内は撮影禁止なので、仏像の写真がないのが残念(絵はがきを買い忘れた)。
参拝後、ちょうどお昼になったのでそのまま昼食へ。 訪れたのはここから近い場所にある「びわこ食堂」。白菜てんこ盛りの「とりやさい鍋(700円)」で有名な場所だ。 店内に入り早速注文。 すぐに鍋に山盛りになった白菜が運ばれてきた。鍋が熱くなって来れば下から食べられるそうだ。
ぐつぐつに煮たぎってくると、まわりからスープがこぼれてくる。下から順に食べてゆく。 「美味しい!」 まさに味噌味の白菜鍋。少しピリ辛でスタミナ食と言うのも頷ける。ご飯にもよく合うし、うどんを頼むと最後に持って来てくれてシメにもいい。愚息にはちょっと辛かったようだが、とてもおいしく食べられた。 食後はホテルに向かう。 現在午後1時半。午後2時よりチェックインができるのでちょうどいい。宿泊地はあまり考えずに楽天トラベルで決めた彦根にあるコンフォートホテル。 初めて泊まるがビジネスホテルだな。まだ新しいようでとてもきれい。部屋はちょっと狭いが、備品は記録しきれないほど揃っている。 チェックイン後、少し休憩して今回の目的である彦根城へ向かう。 幸い駅から十分に歩ける距離だったので、日頃の運動不足解消も兼ねて歩くことにした。駅前にあるホテルから彦根城までは約15分。今日は28度まで気温が上がるそうで、歩き始めるとすぐに汗が出てくる。 彦根城は午後5時ぐらいまで営業しているそうで、現在は3時前なので十分時間は取れそうだ。 護国神社を過ぎた先に城壁があり、その先で入場券を購入して入城する。
入場券を買ったすぐそばにある彦根城博物館で、偶然にもひこにゃんのショーが始まった。 ショーと言ってもゆっくり歩いたりポーズとっとたりする程度だが。まさにゆるキャラ。たくさんの人が写真を撮っていた。
しばらくひこにゃんを見た後、城へ向かう。 関ヶ原の合戦の後、徳川が豊臣を見張る役目で作られた彦根城は、天守閣が残る12城のひとつで国宝にも指定されている。現在姫路城に次ぐ城の世界遺産登録を目指しており、その運動も行われているそうだ。 最初は少しきつめの山道を登る。木々に覆われてひんやりして気持ちが良い。 登りきった先には彦根城のみに見られる天秤の様なその名も天秤櫓(てんびんやぐら)が現れる。櫓を過ぎると、これまた立派な太鼓門櫓(たいこもんやぐら)が姿を現す。この辺りの重厚な造りは一見の価値がある。両方とも重要文化財である。
太鼓櫓を越えるとようやく天守が見えてくる。建物自体はそれほど大きくはないが、立派な造りである。 撮影ポイントを探して写真を撮る。
何故か戦隊ものの撮影を行っていて、すごいたくさんのエキストラで賑わっている。どうやっても彼らが写真の中に入ってしまうので、残念。 天守の外観を楽しんだ後に、天守閣へ登る。 古い木々が組み合わされた城内を歩く。気を付けたいのが階段。かなり狭く、そして急。体の悪い人には登れないレベルである。 愚息を抱きながら気を付けて登る。窓から入る風が強くちょっと寒いぐらいだ。でも景色はいいので、風が来ない場所を探して休憩したりする。
天守閣を見学後、敷地内にある見晴台などで景色を眺めて、彦根城隣にある玄宮園(庭園)へ向かう。 近江八景を模して造られたそうだが、いまいちどこがどうなのかよく分からなかた。綺麗な庭園であることは分かるが。 庭園を見学すると、午後5時を過ぎる。 昼に食べたとりやさい鍋が多過ぎてまだあまりお腹が空かないので、夕食は簡単に済まし早目に就寝。
Day2 コンフォートホテルの朝食は中々のものだった。 無料朝食なので期待はしていなかったが、十分に食べ応えのある内容だ。連泊では飽きると思うが、1日2日では問題ないだろう。平日なのでほとんどサラリーマンだったが、子供用の椅子などもありファミリーでも大丈夫。またコーヒーは挽き立てを飲めるのでこれもいい。 チェックアウト後、早速今日の観光を開始。 今日まず向かうのは、多賀大社。初めて夫婦となったいざなぎ・いざなみの両神を御祭神としている。そこから天照大神や八百万の神々が生まれたことに由来し、延命長寿、縁結び、厄除けなどの御利益、信仰があるという。 彦根からはとても近く15分程度で到着。 平日の朝なので参拝客はほとんどいないが、朝の涼しげな空気がとてもよい。国道307号線沿いにある無料の大駐車場に車を止め、歩いて向かう。
5分ほどで多賀大社に到着。平日の朝なので参拝客はまだほとんど見かけない。神社前にあるお土産屋さんもまだ開いていない様子だ。異様に盛り上がった太閤橋を越えると、立派な門が現れる。
門をくぐり境内へ。美しい光景が広がっていた。
美しい。見事である。 この厳かな雰囲気に鳥肌が立つようだ。さすが滋賀を代表する大社である。もちろんお参りもしたが、それよりもこの神社に漂っている神々しい空気、空間を楽しむ方がずっといい。パワースポットと言う安い言葉では言い表せない場所である。 参拝無料ってのいい。
いやいや、とても良かった。 正直あまり期待はしていなかったのだが、予想以上に良くて驚いた。天気もいいのもあるかな。 多賀大社の後は、これまたこの近くにある湖東三山の西明寺に向かう。 ナビで走ること15分、西明寺に到着。近くていいな。 西明寺は834年の開創で、戦国時代の比叡山焼き討ちの際も、本堂や三重塔などが残り現在に至っている貴重な場所だ。 参拝料を払い庭園を越えて少し登ると、りっぱな国宝の本堂が見えてくる。その隣にはこちらも国宝・三重塔が立っている。なかなかの景観。
滋賀に来てから随分と国宝を見てきた気がする。一体幾つあるのか。素晴らしい場所である。 写真を撮った後、本堂に入る。ここでもまたお寺の人が本堂に安置された仏像について解説してくれる。 本尊薬師如来立像があるそうだが、これは秘仏とのことで通常は公開されていない。なんでもひとりの住職の一生に一度だけ開帳されるとのこと。先は比叡山延暦寺の1200年記念の際に一度開帳されたとのことだ。 その他にも日光・月光菩薩、十二神将などこちらの仏像も見どころ満載。もちろん写真撮影は禁止なので記憶に残すしかないが。 その他にも同じく戦火を免れた重要文化財の二天門、夫婦杉、1万円で自分だけの観音様を安置できたりとこじんまりしたお寺だけど結構楽しめる。紅葉の時期はすごい人だと思う。来てみたい。
すっかり今回の旅は滋賀の仏像巡りになってしまったが、ここらで趣を変えた観光もしたい。 と言う訳で次に向かったのが、びわ湖のクルーズだ。実際今回滋賀に来ておきながら、びわ湖を見たのは彦根城からだけでじっくりとは見ていない。 まだ新しい湖東三山スマートICから名神高速に乗る。 一気に向かったのは大津。アメリカ・ミシガン州と姉妹都市が縁で、その名もミシガンクルーズと呼ばれるびわ湖の周遊クルーズがそこで楽しめる。 全く予約などをせずに行ったのだが、11時40分発の30分前でも十分チケットを買うことができた。 コースはびわ湖を80分周遊するミシガン80(2510円※割引価格/人)を選択。 トイレに行ったりしていると、あっという間に船がやって来た。いざ乗船。
船内は4階建てになっており、幾つかのレストランやカフェがある。 最後尾では真っ赤なパドルが回る姿を眺めることができたり、最上階には360度のびわ湖を堪能できるスカイデッキもある。 船内の至る所に置かれた椅子に座り、びわ湖をのんびりと眺める。平日に昼に贅沢な時間だ。座っているとカメラマンが写真を撮ってくれたりもする(1500円/後で売りに来る)。その後、ミシガンバーでポテトとアイスクリームを買って少し休憩。愚息のアイスクリーム好きにも参ったもんだ。 船内ではちょっとしたイベントなども行っており、食事をしたりしていると80分と言う時間はあっという間に過ぎてしまう。
ミシガンクルーズを終えると午後1時。まだ昼食を食べていないので、自宅方面に走りつつ食事をとることにする。 滋賀最後の食事に食べたかったのが、「近江ちゃんぽん」。彦根辺りからずっと看板などが出ており、食べてみたいと思っていた。 ネットで調べると近江八幡ぐらいまで北上すると店があるので、ナビに入れて早速向かう。 滋賀県の県民食、ソウルフードとまで書かれている「ちゃんぽん亭」に到着したのは14時過ぎ。平日のこの時間なので店内はガラガラ。早速「近江ちゃんぽん野菜並盛(650円)」を注文。 運ばれてきたのはその名の通り野菜がたくさん入ったちゃんぽん。味は和風の野菜ラーメンってとこかな。個人的にはちょっと薄い感じがしたが、たくさんの野菜が食べられるのは良い。
食事を終え、最後にお土産屋さんに向かう。 向かったのは、ここ近江八幡にある「ラ・コリーナ近江八幡」。何の店かと言うと滋賀県では有名だというバームクーヘンを売っている店だ。クラブハリエという有名店なんだが、全く知らなかった。 新しい店なのでまだナビになく、住所を手掛かりに向かうと山と田んぼの道沿いに立派な建物が現れた。平日なのに結構な車が止まっている。さっそく入店。 モダンな感じだ。落ち着ける場所ではない。人も多い。ただバームクーヘンを焼いているのをガラス越しに見られるのは嬉しい。初めて見たのだが、あんなに棒に巻きついているんだと驚いた。 目の前で焼いて、切り、箱詰めしたものを、目の前に並べて売る。小サイズ(648円)だがまだ温かいバームクーヘンを買うことができる。早速買って外で食べてみたが、温かくて柔らかく美味しい。初めてのバームクーヘンだ。 お土産用に1080円のものを買って帰ったが、これも美味しかった。
一番最初に書いたが、滋賀県のびわ湖周辺にこれだけの仏教資源があるとは知らなかった。 良い意味で裏切られたのが今回の旅であった。とりやさい鍋やバームクーヘンも美味しく、国宝級が並ぶ仏教資源を鑑賞し、びわ湖の雄大な景色を堪能する。近場でこれだけ楽しめたのは良い思い出となった。 時間があれば仏教寺院をもっと訪ねてみたいが、それはまた今度の楽しみとしよう。 滋賀県はお勧めの場所である。
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